福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクト緊急報告会

宇都宮大学で以下のとおり報告会を行いました。
130名余りの参加者に来て頂きました。

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2011年7月13日 12:50-16:30 宇都宮大学峰キャンパス 1223教室
主催:宇都宮大学国際学部附属多文化公共圏センター
   福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクト(FSPhttp://sicpmf.blog55.fc2.com/
共催:福島乳幼児・妊産婦ニーズ対応プロジェクト(FnnnP)
http://fukushimaneeds.blog50.fc2.com/
協力:NPO法人 仕事と子育て両立支援センター エンジェルライン

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震津波により東北地方や北関東地方に多大な被害をもたらし、この大震災に伴う福島第1原子力発電所事故は、放射能汚染により住民生活に深刻な影響を与えている。その中でも乳幼児や妊産婦は、将来のためにも守られるべき存在であるだけでなく、放射線の影響を受けやすいとこれまでの研究成果によって明らかになっている。

栃木県や首都圏は、福島原発によるエネルギーに依存している。その中でも、宇都宮大学は、福島の隣県に位置し、福島出身の学生も抱えている。国際学部附属多文化公共圏センターは、社会的弱者をつくることのない多文化共生社会を目指していることを鑑みて、本福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクトに取り組むことによって、本センターの活動目的の一端を果たすと考え、プロジェクトの立ち上げに至った。

本プロジェクトでは、原発事故後、放射能汚染による健康被害の不安を抱えて避難している(あるいは生活している)乳幼児や妊産婦のニーズを把握し、それらのニーズに対応できる団体と連携した体制をコーディネートすることによるサポートを行うことを目的とする。共催である姉妹プロジェクト「福島乳幼児・妊産婦ニーズ対応プロジェクト」では、既存の支援では対応できないニーズについて直接支援も行っている。

報告会では、本プロジェクトで連携関係にある福島大学災害復興研究所のお二方に基調講演を頂いた。その後、4月から学生団体とともに二人三脚で行ってきた活動の報告と、新潟で立ち上げた活動についても報告した。その上で、講演者・報告者、そして異なる専門のコメンテーターを交えて、議論を深めた。
福島大学西崎伸子准教授は、「福島県における子供たちの状況報告と対策―地域社会と不安のあいだで」というタイトルで、政府による放射能汚染の過少評価の中、人々が暮らす生活の場としての視点から現場の報告を行った。福島から全国に散らばる自主避難者が、「避難」することによって「非難」され孤独な生活を送っている現状とともに、避難したくてもできない保護者や子供たちに寄り添う調査と実践活動について報告した。福島大学中川伸二教授は、「放射能汚染に関する生活リスクについて〜保育園の場合」というタイトルで、園児の親、そして保育園PTA会長として、ジレンマや葛藤、「みえない」放射線・将来・胸のうちからくる不安、自主避難を決めた保護者やしない保護者などの実情について報告した。
福島大学からの基調講演の後、本プロジェクトに関する報告を行った。

福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクト事務局長、阪本公美子(国際学部准教授、センター員)は、本プロジェクトの報告として「栃木における福島からの乳幼児・妊産婦のニーズと取り巻く環境」、プロジェクトの概要説明、並びに一次避難所における聞き取り結果の報告をまず行った。その後、後、福島からの電力に依存してきた栃木県が、7月からはじまっている民間住宅借り上げの制度において自主避難者を対象としていないことも問題視した。

次に、宇都宮大学学生ボランティアFnnnP Jr.を代表して、須田千温と濱田清貴は、「福島からのお母さんとお子さんのニーズに応えて―学生ボランティアの立場から」というタイトルで、学生が行ってきた「ママ茶会」、「おしゃべりボランティア」そして住宅マッチングなどについて報告した。

最後に、最も多くの避難者を受け入れている「新潟における福島からの乳幼児・妊産婦さんのニーズと取り巻く環境」について、新潟チーム代表高橋若菜(国際学部准教授)から報告があった。新潟では自治体・市民団体ともに積極的な受け入れを行ってきたが、その中でも、本プロジェクトのきめ細かなニーズ把握が高く評価されている。

報告の後、重田康博代表(国際学部教授、センター長)の司会のもと、事故後の外国人の実情(スエヨシ・アナ)、避難者のネットワーク(陣内雄次)に関するコメントが加えられた。さらに、放射能汚染に関する「不安」を抑圧している状況(田口卓臣)や、危険性を認識することによる「外人」扱い(モリソン・バーバラ)の問題性を提示した。

本報告会には、130名を超える市民と学生の参加だけでなく、NPO法人仕事と子育て両立支援センター(エンジェルライン)のご協力による託児により、子育て世代の参加もあった。フロアからも多数の質問があり、報告会への関心が伺えた。